Tanuki_Bayashin’s diary

電子工作を趣味としています。最近はラズベリーパイPicoというマイコンを使って楽しんでいます

IC555のデューティー比について考えてみた

※なにか気になる点がありましたらコメント欄にご記入ください。
【目次】

1.はじめに

タイマー用として、「555」という呼び名で古くから愛されてきたタイマーICがあります。

どのようなICかというと、回路に応じて、一定の時間だけ出力がオンになる機能と、一定の周波数で信号が発生する発振器として動く機能の2通りの使いみちのあるICです。

今回の記事では一定の周波数で信号を出力する機能に関して、そのデューティー比(1つの周期のうちのオンである時間の比率)に関して、気づいたことがあったのでまとめておきたいと思います。

※タイマーIC 555に関しての基本的な部分や、ニッチな内容については、ネットで検索するなどして、ご自身で調べて頂ければと思います。

(今回の記事の内容は既に誰かが記事にしているかもしれないです。悪しからず)

2.IC555による回路について

図1にIC555を用いた回路図を示します。この回路はIC555の機能のうち、一定の周波数で電気信号を出力する回路となっています。

図1 タイマーIC555を用いた回路図

周波数 f \,を決める要素は、図1ではR_1、R_2、R_3、C_1が絡んできます。
この後の説明では、便宜上

\begin{aligned}
R_1    &→ R_1\\
R_2+R_3 &→ R_2\\
C_1    &→ C\\
\end{aligned}

という形で記述していきます。

IC555では、まずコンデンサCに電荷がたまります。その間の時間をT_1とすると、
 T_1 = 0.693(R_1 + R_2)C\,\,[\mathrm{sec}]   (1)

という式で求まります。するとコンデンサ電荷がたまり、コンデンサの電圧が上昇すると、IC555の働きにより、コンデンサ電荷が放電されるようになります。

放電が終るまでの時間、IC555の出力は0Vとなります。このときの時間をT_2とすると、T_2
T_2 = 0.693 R_2 C\,\,[\mathrm{sec}]   (2)

で求まります。図2にこのときの様子を示します。
(図2の中でT_{on}T_1T_{off}T_2のことを示します)

このとき、IC555の出力は、周期 T_1\,+\,T_2の間隔で連続して矩形波を出力します。よって出力の周波数f
 f =\dfrac{1}{T_1\,+\,T_2}\\
 =\dfrac{1}{0.693(R_1+2R_2)C} \quad[\mathrm{Hz}]\quad\quad (3)\\

で求まります。

図2 デューティー比について

また、電気信号にはデューティー比というのがあり、T_{on}が長い信号はデューティー比が大きく、T_{on}が短い信号はデューティ比が小さいと表現します。

このデューティ比をここではd で表すと、
d\,=\,\dfrac{T_1}{T_1\,+\,T_2}     (4)

により求まります。この式に(1)(2)式を代入すると、
d\,=\,\dfrac{0.693(R_1\,+\,R_2)C}{ 0.693(R_1\,+\,R_2)C\,+\,0.693R_2\,C}
 =\dfrac{R_1\,+\,R_2}{R_1\,+\,2R_2}   (5)

となります。
ここで、dを設計値として任意の値に指定したいとしたとき、R_1、R_2の値はどのようにしたらよいかということを考えてみます。

3.デューティ比dについて

3.1 デューティ比は50%以上?

(5)式を変形します。


\begin{aligned}
d(R_1\,+\,2R_2)\,&=\,R_1\,+\,R_2\\
R_1(d\,-\,1)&=R_2(1-2d)&(6)\\
\therefore R_2&=\dfrac{d-1}{1-2d}R_1&(7)\\
\end{aligned}

 R_1、R_2>0なので
\dfrac{d-1}{1-2d} >0

デューティ比の定義より、
0≦d≦1

なのでd=1のときは、(6)式より
R_2=0[Ω]   (8)

となりますが、それ以外はd<1となるので、
d-1<0
より、

1-2d<0
でもあることになります。変形すると、
\dfrac{1}{2}< d \quad\quad(9)

よって、IC555では発振回路を構成するとき、デューティ比d\dfrac{1}{2}より大きくなることが分かります。

3.1.1 簡単な計算で分かること

式(6)を見てみます。
R_1(d-1)=R_2(1-2d)    (6)

この式より、

\begin{aligned}
d&=1のとき&R_2=0\\
d&=\dfrac{1}{2}のとき&R_1=0
\end{aligned}
であることが分かります。

これはR_2=0であれば、コンデンサ電荷が放電にかかる時間が一瞬であるため、T_2=0であるからだと考えられます。
またR_1=0であれば、充電にかかる時間も放電にかかる時間も同じになるため(どちらもR_1 の影響を受けなくなる)、デューティ比が0.5になる、という訳ですね。
(実を言うと回路の構成上、R_2をゼロとしてよいのか、?なところです)

またここで、
 \dfrac{1}{2} < d < 1
の範囲内において、

 D=\dfrac{d-1}{1-2d}\quad\quad(10)
と置くことにして、

R_2 = D R_1    (11)
と記述することにします。

3.2 発振周波数 f との関連

(3)式を再掲します。

\begin{aligned}
 f  &=\dfrac{1}{T_1+T_2}\\
 &=\dfrac{1}{0.693(R_1+2R_2)C} \quad\quad (3)\\
\end{aligned}

このとき、fも設計値としてある値に指定したいとすると、(3)式を変形して、
R_1+2R_2=\dfrac{1}{0.693Cf}

式(11)より

\begin{aligned}
 R_1(1+2D)&=\dfrac{1}{0.693Cf}\\
\therefore R_1&=\dfrac{1}{(1+2D)0.693Cf}
\end{aligned}

また、
 R_2=D R_1 = \dfrac{D}{(1+2D)0.693Cf}

 Dはデューティーdより求まり、fは設計値としたので、コンデンサCの値により、R_1、R_2を決定できることが分かりました。

4 まとめ

以上まとめると、

  • IC555で発信回路を構成する場合、デューティー比は50%以上という制約がある
  • デューティー比と2つの抵抗値の間の式を検討した
  • デューティー比と発振周波数を設計値として指定したときの、R_1、R_2、Cの間の関係式を検討した

抵抗値とコンデンサの値を掛け合わせた値が一定のとき、抵抗の値をいろいろ変えたとき、発振の様子がどう変わるのか、知りたいと思いました。

余裕があれば、実際に回路を組み、抵抗やコンデンサの値と発振周波数やデューティ比の変化を調べ、まとめたいです。

おまけ

本文中でデューティ比dの関数としてDという値を定義しましたが、おまけとしてDdのどのような関数になるかを調べてみます。

図3 デューティ比dと関数Dのグラフ(d=0.5のまわりでDは±25以内にしています)

(9)式を再掲します。
D=\dfrac{d-1}{1-2d}   (9)
変形していきます。

\begin{aligned}
D&=-\dfrac{1}{2}\,\,\dfrac{2-2d}{1-2d}\\
&=-\dfrac{1}{2}\,\, \dfrac{1+1-2d}{1-2d}\\
&=-\dfrac{1}{2}\,\,\dfrac{1}{1-2d}-\dfrac{1}{2}\\
&=\dfrac{1}{4}\,\,\dfrac{1}{d-\dfrac{1}{2}}-\dfrac{1}{2}\\
\end{aligned}

これにより、
d=\dfrac{1}{2}、D=-\dfrac{1}{2}
が漸近線であることが分かります。

グラフにすると図3のようになります。 0.5≦d≦1の範囲内でDは0以上の値を取っていることが分かります。
(終わり)