Tanuki_Bayashin’s diary

電子工作を趣味としています。最近はラズベリーパイPicoというマイコンを使って楽しんでいます

永久ブランコの製作

※なにか気になる点がありましたらコメント欄にご記入ください。また、工作や回路を製作する場合には、細かい作業などに対して、細心の注意を払われるようお願いいたします。

【目次】

1.はじめに

筆者の Twitter界隈で、電磁石を用いて木馬のようなおもちゃを、継続して動かしている動画を見ました。自分も同じようなものを作ってみようと思い立ち、今回の作品を製作するに至りました。

(ここでは写真1のように、針金を加工したものを、その動きから”永久ブランコ”と呼んでいます)

写真1 作成した”永久ブランコ”

2.動作原理

写真1のように永久磁石を取り付けた振り子があります。なんらかの外力を与えると、振り子は重力の影響も受けて振動を続けます。
しかし、実際には軸の部分で摩擦を受けるなどして、しばらくすると止まってしまいます。

そこに写真にもある通り、下に設置されたコイルに電流を流すことにより、磁界の影響を受けてブランコは継続して運動を続けます。

このようにして、ブランコ(単振り子)を、すぐに運動が減衰していってしまわないようにしています。
(電力や回路の耐久性などの問題もあるので、永久に運動を続けることはないです)




単振り子の動きや振動するときの時間の幅(周期)などについて、以下のサイトを参考にしました。

wakariyasui.sakura.ne.jp(この方との面識は特にないです)

このサイトより、ブランコ本体の振動するときの周波数は次式で示されます。

 f  = \dfrac{1}{2 \pi} \sqrt{\dfrac{g}{l}}\quad \mathrm {[Hz]}

ただし
 g :重力加速度 \mathrm { [m/s^2]}   l:振り子の長さ \mathrm {[m]}

実際に計算してみると、製作した振り子(写真3(右))の長さは磁石の重心辺りまでと見積もって30 \mathrm {[mm]} とすると、

 f =  \dfrac{1}{2 \pi} \sqrt{\dfrac{9.8}{0.030}} \\ \quad = 2.88 \mathrm {[Hz]} \quad \quad (*)

となりました。

3.製作した回路とブランコ

図1 製作した回路の回路図

回路図を図1に示します。IC555を用いて矩形波の信号を作り、それをエナメル線を巻いて作ったコイルに流しています。(組み立てた回路を写真2に示します)

また、IC555の出力端子に青のLEDも取り付けておきました。コイルに電圧がかかっているときはLEDはオンで、電圧がかかっていないときにLEDがオフと切り替わります。

写真2 組み立てた回路
写真3 実装した基板の拡大写真(左)とブランコの部分(右)

IC555は発信回路(アステーブル・マルチバイブレーター)や一定時間、回路をオンにしておく回路(ワンショット・マルチバイブレーター)を作るときに使うICです。

回路図ではR1とR2、それにVRとC1からなる部分にて、約0.5~7[Hz] の周波数にて発振します。(2章で求めた単振り子の周波数を含むように決めました)



IC555については以下のリンク先の解説を参考にしました。
875s.com(この方との面識は特にないです)

実際に発振周波数の値を計算してみます。上記サイトの見出し「ここで使用した回路」の中ほどに式があります。

これによると、以下の式により求めることができます。

(発振周波数) = 1.44 / (R_1+2R_2)\cdot C \quad  \mathrm {[Hz]}

ただし、抵抗の単位は \mathrm {[ Ω ]}コンデンサの容量の単位は \mathrm {[ F]} となります。

(1)半固定抵抗器(VR)の値が 0\mathrm {[ Ω]}のとき\quad R_1=10 \mathrm {[KΩ]}、R_2=2.4 \mathrm {[KΩ]}、C=10 \mathrm {[\mu F]} なので
 f= 1.44 / (R_1 + 2R_2)\cdot C \\
\quad = 1.44 / (10000 + 2 \cdot 2400) \cdot 10×10^{-6} \\
\quad = 6.76 \quad \mathrm {[Hz]}

(2)半固定抵抗器の値が 100\mathrm {[KΩ]} のとき VR 10 \mathrm {[ KΩ]} なので、この値を上の式の R_2の値に加えてしまいます。
すると、

f=1/0.693(10000 + 2 \cdot (2400 + 100000)) \cdot 10×10^{-6} \\
\quad = 0.46 \quad \mathrm {[Hz]}

となります。

※動画撮影後、撮影した映像をコマ送りで確認して分かったのですが、単振り子が1回振動する間に、画面のLEDは2回点滅していました。つまり、永久ブランコの振動周期は、共振しているとき、タイマーIC555の発振周波数の1/2ということになります




可変抵抗(VR)のつまみを調整して、回路の発振周波数がブランコ本体の共振周波数と合致すると共振が起こり、信号に合わせて大きく揺れました。(動画を参照してください)

ただ実際は振り子の部分の慣性モーメントを考慮して共振周波数を求める必要があります。しかし、大体のオーダーは2章の(*)の式の値とそれほどは変わらないと見込んで、抵抗やコンデンサの値を設定し、細かい部分はVRにて調節するようにしました。

3.動く様子

以下に実際に組み立てた回路にて、ブランコを動かしている様子をお見せします。

youtu.be

Youtube

動画中、初めの辺りと1分経過した辺りで共振してます。
共振する周波数にて、振幅が一番大きくなっていることが分かります。
チューニングにいくらか時間がかかってしまいました。


(以下追記 2023/2/26)
動画を編集するときに、コマ送りにして振幅にかかる時間を計りました。筆者のカメラは1分当たり30コマだったのですが、振り子が10回振動するコマ数は122コマでした。したがって振動1回分のコマ数は

122÷10=12.2コマ

なので、1コマ分の時間数は1/30=0.033[sec] であることにより、振動1回分の周期Tは

T=12.2 / 30 = 0.41 [sec]

と導かれます。すると、

f=1 / 0.41 = 2.46 [Hz]

であることが分かります。これは2章の(*)式の値、2.88[Hz] とよく一致しています。
(追記は以上です)

以上です。