Tanuki_Bayashin’s diary

電子工作を趣味としています。最近はラズベリーパイPicoというマイコンを使って楽しんでいます

【CNCルーター】プリント基板を切断する~実行編

※なにか気になる点がありましたらコメント欄からお伝えください。また、CNCルータなど工作機械を操作する場合には、細心の注意を払って行うようお願いいたします。

目次

1.はじめに

 故あってプリント基板を切断することとなりました。今回は今年12月9日に投稿した「【CNCルーター】プリント基板を切断する~準備編」を受けて、実際に生成したGコードをもとにCNCルーターを動かして基板を切断する手順を解説していきたいと思います。

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図1 切断した基板(バリをとるために小型のルーターを使用した)

2.Gコードについて

 CNCルーターGコードと呼ばれる1種のプログラムで動作します。FlatCAMで生成されたコードを読み込むと、Gコードで書かれたプログラムがCandle の画面に表示されます。以下に簡単なGコードを列記します。

 G00 :平行移動(低速) G01Ⅹ0.00 で座標Ⅹ0.00(mm)まで移動させるときの命令。
     Y、ℤが指定されていないときはY、Zの値はそのままの状態を維持する。
 G01 :平行移動(高速)。X、Y、Zに移動先の値(mm)を指定する。
 F80.00:移動速度の指定(mm/分)。水平方向(XY平面内)と垂直方向(Z軸方向)の
     2種類が指定可能
 M03 S10000.0:主軸正転 スピンドルモーターの回転数(rpm:正転)を指定できる。
         (左の場合では10000回転を指定している)

 これくらい知っておけば、ある程度、困らないと思われます。詳しく知りたい方は、検索などで調べてください。(CNCルーターにより、機能がないために無効となる命令もある)

3.Candle の使い方

 CNCルーターを動かすソフトの一つに「Candle」と呼ばれるものがあります。下のリンク先からダウンロードできるようです。アンインストールしたいときはフォルダごと、削除すればよいようです。(バージョンはいくつかあるようです)

GitHub - Denvi/Candle: GRBL controller application with G-Code visualizer written in Qt.

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図2 Candle.exe のダウンロード画面(Github

 Candle.exe を実行すると図3のような画面が表示されます。また、Gコードのファイルを読み込むと、切削する部分が画像として表示されます。

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図3 Candle.exeの実行画面

3.1 原点調整

 まず、座標の基準となる原点の調整について記述します。

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図4 XY座標のリセット、ℤ座標のリセット Z probe
3.1.1 Z軸の調整

 ℤ軸(垂直方向)の原点調整にはℤprobe という便利な機能があります。3018‐PROではコントローラーにA5という接続箇所があります。ここにコードをつなげ、2本の電線をそれぞれ切削する対象と、エンドミルにつなぎます(ドリルの刃でもV 字カッターでも可能)。このとき [ Z probe ]をクリックするとℤ軸が降下してゆきます。

 するとエンドミルが対象物と接することにより2本の電線が導通状態になるので、Z軸がいったん浮き上がり、その後徐々に下に移動し、再び導通するとℤ軸が停止します(動画1 を参照)。この位置でZ軸の値をゼロにリセットすることで、原点調整が可能となります。(プローブに電気が流れることを利用しているので、加工するものが金属でない場合、表面にアルミホイルを張るなど工夫が必要です)

動画1:ℤ軸の原点調整の様子
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 3018‐PRO以外のCNCルーターだと、コードが3本必要なものもあるそうなので、その場合はそれに適した方法にて対処してください。

 以下のリンク先のように製品化されているものもあります。筆者は図5のような治具を作り、[ Z probe ]のときに利用しています。プリント基板の切れ端を利用して作りました。厚さは約 1.6mmなので、その分空中にて高さが ‐1.6mmになるようにして、その時点でZ座標を0にリセットしています。

www.amazon.co.jp

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図5 Z probe のための治具
3.1.2 X Y軸の調整

 こちらはやや原始的な方法を用いています(図6)。Candle.exe では、Gコードで操作する以外に、X、Y、Z軸をそれぞれ単独で動かす機能もあります(1回のクリックで0.01mmから200mmまでの移動を調整可能)。この機能により、エンドミルの先端を、原点として指定したい辺りまで移動させ、光を当てながら影を見ることで調整しています。

 カメラで撮影した画像を利用したり、光の反射を利用するなどの方法が可能でないか、今後検討したいと思っています。

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図6 XY軸の調整(LEDライトを用いている)

3.2 基板の切断(Gコードを実行)

 動画2にて基板を切断している様子を示します。Gコードを読み込むと、図7のように切削する部分が線で描かれます。マウスを使うことにより、向きを3次元で変えることもできます。

 動画2
youtu.be

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図7 動作開始(上)と実行中(下)の画面


 切断する対象は、筆者の場合、両面テープにて固定しました。両面テープの厚さにより、削られる深さに変化が出ないように注意が必要かと思われます。
 
 プログラムを動かすには画面下の [ Send ] をクリックします。プログラム中に動作を一旦停止させるような指示があった場合、その地点で一時停止します。準備が整ったら、右上の [ Hold ](図7)をクリックすると、動作が再び開始されます。
 今回の場合、約10分で加工が終わりました。作業にどれくらい掛かるのか、目安となる時間が画面中央に表示されます。
 
 また、プログラムを途中で終了させたいときは、画面下側中央の [ Abort ] をクリックすると作業は終了となります(以降のGコードは無効となります)。

 また、今回の切削では台に当たる部分に板を用いました。木材は湿気で膨張したり収縮すると思われるので、湿気に影響されない樹脂に変えて試してみたいとも思っています。

4.まとめ

 CNCルーターを動かすためのプログラムであるCandle.exe の紹介をしました。まだ、うまく活用できていない面もあるかと思います。コメント欄にてご指摘いただけるとありがたいです。